何が起こっても驚かないほど政治・経済は激動の時代に突入。これまで私の周りの高齢女性から「物価の高さ」を嘆く声が上がっても、少し踏み込んで「円安」「外貨商品の投資」等の話をする人はあまりいませんでした。しかし、時代は変わり女性の関心も変わってきました。
今の高齢女性は専業主婦期間が長い人が多いのですが、時代の変化を受け入れつつ、しなやかに生きていらっしゃる人もかなり見受けられます。私も地域の趣味の会(ほぼ女性)に複数参加していますが、皆さんご自身の主張もはっきりされ前向きかつお元気で羨ましい限り。
ひと月ほど前、趣味仲間との雑談中、夫を介護中の人が「早く未亡人になりたいわ!」と衝撃の一言を発しました。
一瞬驚いたもののその理由を聞いて思わず頷くと共に、旧態依然の男女の認識の違いが当事者を苦しめていることも少し分かりました。
今回は、少子高齢化を含め、めまぐるしく変わる世の中で今迄の暮らしを維持するには、男性も女性も変わらざるを得ないことに気づく大切さについてお話します。
事例1 「早く未亡人になりたいわ!」 ~妻の本音
妻の本音は以下のとおり。
女性は介護が必要な状況になると割と気軽にデイサービスに出かける人が多いが、男性は行きたがらない人が多く、自宅で介護する妻は気の休まるときがない。可能なら特別養護老人ホームや老人保健施設への入所も検討して欲しい・・・。
要介護度は身体の弱り度でほぼ決定します。認知症が進んでも身体的に支障がないと介護度は軽度とされます。ですが、徘徊が頻繁になると自宅で介護する人の負担が重いのも現実。高齢夫を介護する妻も体力の低下や人との交流不足で心身も不調になりがちです。
世話する大変さを知っているからこそ、家族に面倒かけたくないとデイサービスの利用に積極的な妻の本音も、同じ高齢女性の私はよく分かります。
①女性の見方として「男性はプライドがあるから」で片づけていいの?
何故、男性はデイサービスに行きたがらない?に対しての、一番の問題は「男性はプライドがあるから」と妻の多くがあっさり容認してしまっていること。確かに、プライドがあればこそ厳しい現役時代を乗り越えてこられたことは認めます。
今更、幼稚?なゲーム的なことをするのは嫌だ、幼稚なことば遣いをされるのが嫌だ、弱った体に診察や入浴介助等で人に触れて欲しくない等・・・男性の気持ちもよく分かります。とは言え、自宅に引きこもって活動を減らせば生活のメリハリも失われ世界が狭くなりがちに・・
人生100年時代。個人的には、老いを受け入れ、今できることを楽しむ工夫でお互いをいたわりあい、協力して暮らせてこそ幸せだと思うのですが・・。
②家族介護の実態
総務省の「社会生活基礎調査」によると、15歳以上で普段家族を介護している人(介護者)※は約653万人(コロナにより介護施設で介護を受けている者の一時帰宅制限で2016年より約45万人減少)。 男女別にみると、男性が約257万人、女性が約397万人と介護者全体の約6割が女性。最近は、街で夫が妻の車椅子を押している姿を見ることも増えました。それでも、統計上女性の方が長生き、かつ妻の方が夫より年下であることが多く、夫の介護は妻が担うことが多いのも現実です。
- ※1年間に30日以上介護をしている状態を普段介護をしているとしている
厚生労働省 介護保険事業状況 各年4月末、総務省 社会生活基礎調査 令和3(2021)年より著者作成
※参考(2022年11月14日時点):厚生労働省 介護保険事業状況 各年4月末
※参考(2022年11月14日時点):総務省 社会生活基礎調査 令和3(2021)年
事例2 まさかの展開 ~たった4ヶ月の入院で要介護1が要介護5に
コロナで人生が一変した人もいます。
夫(80代・要介護1)は妻が自宅で介護していました。判断能力があり自宅で暮らしす夫と働く妻(70代)は、それなりに大変でしたが普通に暮らしていました。しかし、コロナ過の中、夫は内臓の手術のため入院、妻は1度も面会できず、状況は悪化の一途をたどりました。
延命治療に同意せず4ヶ月後にやっと退院。夫の判断能力は失われ寝たきり(要介護5)となり、妻は最期まで夫を自宅で介護する覚悟を決めました。今、介護付有料老人ホームに入居すれば、面会もできない可能性があることを恐れての判断です。
妻の介護の負担は以前と比較にならないほど増え、かつ在宅コストもかなりのものです。妻は続けていた仕事も中断。コロナのため、夫と妻の人生も大きく変わってしまいました。遠くに暮らす子供を当てにすることもできず、妻が倒れてしまわないか心配です。
①高齢者世帯・夫婦のみの世帯が46.5%、単独世帯が49.3%
65歳以上の人がいる高齢者世帯の世帯構造をみると、夫婦のみの世帯が46.5%。単独世帯が49.3%(男性17.6%・女性31.7%)。単独世帯は、男性は35.7%、女性は64.3%。男性が70~74歳が29.8%、女性が85歳以上で24.3%と最も多い結果です。
※参照(2022年11月14日時点):国民生活基礎調査 令和3年
事例3 車いすの夫が妻の趣味の会参加の送迎 等
一般的な例は傾向を知るには分かりやすいですが、中には聞いてびっくり!元気をもらう「目から鱗」の今を楽しんでいる以下のような夫婦もいます。
①Aさん(80代・夫)は、自力で歩けず車いす生活ですが、活動的な妻が趣味の会に参加する会場まで、ときに車で送迎し、趣味の会の書類作成も引き受け、すべてパソコンでされています。
②Bさん(70代・夫)は、要介護度も高く車いす生活でしたが、在宅で介護保険のデイサービスや訪問介護を利用していました。師範代並みの麻雀の腕でデイサービスでも人気で、親しみやすい人柄から自宅を訪れる友人たちと共に麻雀を楽しむ日々。夫の一日のスケジュールを把握している妻は、隙間時間を上手に使って趣味を楽しんでいました。
いずれの妻もさりげなく夫の介護をしつつ、夫に感謝の言葉を忘れない姿が印象的。どちらも、私の素晴らしい友人たちのお話。外出に繋がる趣味を持ったり、友人への手紙をポストに投函する等の用事を作り、リハビリ替わりにする工夫をしている人もおり、私も学び中です。
まとめ
人生100年時代の高齢期を生き抜くには「人と社会」とのつながりを楽しむことから始まります。
過去のプライドも大切にするが、過去に拘らず、柔軟性を持って「ちょっとした外出・人との交流・自分が楽しい活動」に参加することで体と心が満足して生まれる「ゆとり」で人に優しくなれそうです。
確かに言えることは、高齢期(単独世帯を含め)を楽しく生き抜くには、IQ(知能指数)やEQ(感性指数)を高めることも大切ですが、「前向きに生きることも能力のうち」と言える、体験の積み重ねが大事かもしれませんね。