最近、「高齢期」を意識した出版が増えています。私が所属する趣味の会の平均年齢は約75歳、まさに当事者の高齢者であり、そうした本の内容が時に話題になります。
「面白かった!参考になるわ!」という反応が大半の一方で、「でもなんかちょっと違うのよね・・・」と言う声も・・・。実は、私も一部辛口に受け止めていたので思わず頷いていました。
実際に高齢期を生きてこそ分かる、気持ちと体力の現実を味わっているからこそ感じる違和感は、専門家だけでは解決できない分野かも知れません。
そんな訳で少しでも学び直したいと、この2か月で「成年後見制度・在宅医療と介護・家族信託・80-50問題」等、高齢期に起こる課題をテーマにした講演5会場に参加して気づきました。
おかれた立場で見ている「終末期の景色」が違うことに・・・
今回は、人生最期の居場所の「景色」についてお話しします。
「長い・短い」セカンドライフの差こそあれ、人はいつかその先に「死」を迎えます。そのとき希望しても事情により叶わないことも。しかし、情報を得て「できること・できないこと」の限界を知れば今から工夫もできそうです。
死亡場所は自宅・介護施設等が増加傾向~2020年
死亡場所は1950年当時と逆転し病院・診療所が増加し自宅が減少していましたが、2020年は自宅・介護施設等が増加傾向です。
- *介護施設等:介護医療院、介護老人保健施設、老人ホーム。
※出典(2023年1月16日時点):厚生労働省 在宅医療における急変時対応及び看取り・ 災害時等の支援体制について 令和4年6月15日
Q:死期が迫っていると分かったとき、人生の最期をどこで迎えたいか?
A:約60%が「自宅」を選択、絶対避けたい場所は「子の家」と「介護施設」。「介護施設」は年齢が上がるほど割合が増えます。切ない現実です。
Q:死期が迫り人生の最期をどこで迎えたいかを考えるときに重要なことは?
A:子は親が家族との十分な時間を過ごせることを望んでいると思い、積極的医療を望んでいる。親は、家族等の負担にならないこと、1人でも最期を迎えられることを子より望んでいる。
親の心、子知らず。子の心、親知らず。人生の最期について思いはすれ違っています。
- 調査結果より著者コメント追加
※出典(2023年1月16日時点):日本財団 人生最期の迎え方に関する全国調査 2021年3月29日
終末期における機能の低下イメージ
終末期の機能の低下イメージを知ることは大切です。「思い」をいつも娘の私に伝えていた母は「がん」で亡くなりましたが、最期は希望どおり自宅で過ごしました。母の余命宣告を受けた私が医師と連携して支援できたからです。
※出典(2023年1月16日時点):Lynn and Adamson, “Living Well at the End of Life,” WP-137, CA: Rand Corporation, 2003
50歳代から意識しておきたい「終末期」のこと
「在宅医療と介護」の講演会会場は終末期に関心があるほぼ70歳代の高齢者で盛況でした。帰り道、隣に座った要介護5の母を介護していると言う60代半ばの女性と少し話しました。
「母を特別養護老人ホームに入れたいが、身元保証人を2人つけないとダメ」と言われた。「成年後見制度の申立ても検討したが交流のない親族に照会がいくそうだからしたくない」そして一言。「費用のことも含め知りたいことが何も聞けなかった・・」と不満げでした。
講演会では高齢者の医療依存度や要介護度により、利用可能な各種高齢者施設の説明もありましたが、精通している職員のお話は、知識不足の一般の人には消化不良気味。
具体的なことは、講演会の内容を土台に自分で関係窓口に足を運び調べる必要があります。
しかし、自身が高齢かつ介護中では時間も体力も不足気味です。だからこそ、身軽なときに困った状態を想定(想像)して講演会を受講し備えておくのがベストでしょう。
本音を言えば、こうした講演会に参加して欲しいのは当事者の親は勿論ですが、50歳代からの子世代にも当てはまります。話題を共有しておけば、日頃からの親子のコミュニケーション能力に磨きがかかり、満足する終末期を迎えられそうです。50歳代もいずれは終末期のことは我が事なのですから。
単身者は勿論、誰もが自分のことは自分で早くから備える時代になってきました。高齢者が溢れる未来はすぐそこに来ています。