老後が不安と分かっているが、備えは不十分 ~長生きリスクの認識が甘すぎる中高年~


長生きリスクの認識が甘すぎる中高年

厚生年金の支給開始年齢の引上げや高齢化の不安から、定年後も働く人が増えて、企業・共済組合でもライフプランセミナーが盛況です。退職間際のセミナーが多いのですが、せめて、色々な準備が可能な退職までに10年ほど期間があるときに開催した方がより気づきが多いと思っています。欲を言えば、社員・組合員の配偶者同伴がベターでしょう。但し、今一番ライフプランセミナーが必要なのは、厚生年金に加入しないで働く自営業者等です。加入年金格差は老後の生活の格差に繋がることが多い例をたくさん相談から見てきました。しかし、自営業者対象のライフプランセミナーはあまり開催されていません。勤務者などに比べ情報弱者である人に本当に伝わって欲しい情報が届いていないのが残念です。
今回は、統計の結果をヒントに自分の老後までどうしたらいいのか考えてみます。

1.金融広報中央委員会・金融リテラシー調査2016年2~3月調査より

50代の男女で老後の資金計画をたてている人 38%

金融リテラシー調査は、18歳以上の個人の金融リテラシー(お金の知識・判断力)の現状把握を目的とする、わが国初の大規模調査です。その調査によれば、50代の老後への準備はかなり厳しい状況で、長生きリスクを実感として受け止められていない様子です。

自分の年金についての理解度が低い

中でも、老後生活費の要となる年金についての関心度が低いのが気になります。年金への不安を口にする割には、自分の年金に対する事前調査には疎い感じです。確かに年金は難しいのは分かりますが、日本年金機構から届く書類なども読んでわからないことは、定年10年位前には見込額の試算も含め年金事務所などで確認するくらいは必要です。

家計管理・生活設計の金融教育を実際に受けた人は少ない

家計管理・生活設計についての「金融教育」は、「行うべき」とする意見は多いが、実際に受けた人は8.3%と少ないのが特徴です。必要と分かっているが、受講のチャンスや気づきがない環境も関係しているようです。

2.老後の収入は、夫婦の状況で異なる

若い元気なときはさほど感じない格差は、完全にリタイアしたときにより大きくなります。私たちは蓄えた資産の多寡は気にせず(表に出さず)、毎月の収支内で暮らしがちです。イザ本当の高齢期を迎えたとき、その資産の格差に驚くという人も案外多いのです。

夫50歳(昭和41年4月2日生)、妻47歳(昭和44年4月2日生)でみてみましょう。

事例1:夫が80歳で亡くなった場合の夫婦の年金

A夫さん(会社員・厚生年金40年)  妻B子さん(国民年金・40年)

C夫さん(自営業・国民年金 40年)  妻 D子さん(国民年金・40年)

自営業だから働けるうちはそれなりに暮らせるため、公的年金の少なさもカバーできます。但し、夫が病気になり働けなくなった、夫が死亡して遺族年金がないことが分かっていれば、民間の個人年金保険で備える、毎月定期的に預貯金に回すなど生活の工夫に着手できたかも知れません。

事例2:定年または事業廃止

Aさん、60歳で定年・退職金2,000万円予想

退職金があれば、住宅ローンの一部または一括返済など工夫も可能です。定年後、一般的に住宅ローンがあると生活は厳しいことを知っていれば、住宅購入時に借入金額も考慮した購入も可能です。「借り入れ可能額」と「返済可能額」とは別物という理屈が理解されていません。

Cさん、65歳で事業廃止予定・退職金なし → 小規模企業共済に加入

自営業者は健康なら長く働けるからと、健康を害しまたは事業不振になることがイメージできず、事業廃止まで会社員の退職金に相当するお金を準備していない人も見受けられます。
自営業者の公的年金や退職金がないことなど、将来をイメージできれば、そのときに備え時間を武器に小規模企業共済や国民年金基金、確定拠出年金(個人型)、投資信託で毎月積み立てておくことも可能です。
今回は小規模企共済に50歳で加入したCさんで試算してみます
小規模企業共済とは、国が作った経営者の退職金制度です。毎月の掛金は全額所得控除となり、共済金は一括受取り、分割受取り、一括と分割受取りの3種類(受給要件有)です。
一時金は退職所得扱い、年金は公的年金等として雑所得扱いと優遇されています。Cさんの実質返戻率は162%です。

長生きの時代になってきたからこそ、公的年金だけでは支えきれない 経済的背景を予想した準備が求められています。人生の節目にやるべきことに気づくアンテナづくりとそのとき必要な情報に敏感になりましょう。人生の節目とは気づいたときです。

※年金額は平成28年度価格