これだけ、年金のことがマスコミなどで騒がれているのに、本当に必要な人に年金情報が伝わっていません。それがとても不思議です。雇用の低迷化で、今後益々失業者も増え、年金未加入者も増えそうです。そこで、今回は、主に若年者に絞った、免除制度や納付特例、免除特例についてお話しましょう。ポイントは、所得の認定基準です。
目次
親世代も気づき始めた ~ 子どもの年金未加入の深刻さに
最近、50代の人を対象としたライフプランセミナーで感じるのは、ご自分の年金の質問もさることながら、子どもの年金のことを率直に質問する人が増えたことです。「大学院生ですが、国民年金に加入した方がいいのでしょうか?」、「今フリーターで年金に加入していないのですが・・」、「リストラされて収入がないが、保険料は払わないといけないのでしょうか?」などです。以前は、休憩時間中にそっと個人的に相談を受けることが多く、この変化は驚きです。
保険料の納付が苦しいときは、免除制度などの利用を
国民年金の保険料の納付が苦しいときは、免除制度などが利用できます。これらの制度を利用した期間は、年金を受給するための資格期間に入ります(年金の受給資格などは第10回を参考にしてください)。いずれも申請が条件です。但し、制度の内容は、少しずつ違うので注意が必要です。
免除期間の老齢基礎年金額
免除期間の老齢基礎年金額は、国庫補助の割合で変わります。国庫負担の割合は、平成21年4月から3分の1から2分の1に増えます。年金額も以下のように変わります。
免除制度などの審査基準の所得 ~ 「前年の所得」で判断の矛盾
免除申請などは保険料の納付に困ったときに役立つ制度です。しかし、所得の審査基準が原則「前年の所得」で判断です。今本当に困っている人が前年の所得がネックで申請できず、あまり生活に困ってなくても申請できる以下のような矛盾もでてきます。
大量失業時代だからこそ、知っておきたい「特例免除」
前年の所得が関係する免除制度ですが、退職・失業した場合に限り、本人の所得を除いて審査する特例免除があります。困ったときは利用してください。年金額は3分の1(法案通過後は2分の1・免除を受けた場合の年金額参照)もらえます。
免除の世帯構成別の所得基のめやす
世帯構成 | 全額免除 | 一部免除 | ||
4分の3免除 | 2分の1免除 | 4分の1免除 | ||
4人世帯(夫婦・子2人) | 162万円 | 230万円 | 282万円 | 335万円 |
夫婦2人 | 92万円 | 142万円 | 195万円 | 247万円 |
単身世帯 | 57万円 | 93万円 | 141万円 | 189万円 |
※若年者の納付猶予特例は、全額免除基準と同じ
情報は、活かしてこそ!
情報は、本当に必要なとき知っていて、使えてこそ価値があります。気になる雇用記事などが掲載されたら、その先の年金は?健康保険は?どうなるのだろうなど調べてみてもいいですね。巷に溢れている情報から、自分に必要な情報のキャッチ能力が、あなたとあなたの家族を守ることもあるからです。
執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/