年金の相談の現場で多いのが、「過去の国民年金の保険料を今から納付できないの?」という質問です。そんな人たちに嬉しいお知らせです。これまで未納分は過去2年分しか遡って納付できませんでしたが、平成23年※より「過去10年分」の追納が可能になる予定です。年金額を増やしたい人や、公的年金の受給資格期間(原則25年)が足りない人、年金を早く貰いたい人など利用してください。事例で考えてみましょう。
※平成22年3月現在、開始日は決定しておらず、平成23年10月1日までの政令で定める日となっております。
年金額を増やしたい専業主婦だったA子さん(59歳)の場合
結婚前民間会社に4年勤めていたA子さんは会社員の夫が退職後、国民年金未加入期間があります。A子さんの公的年金の加入期間は、厚生年金4年+カラ期間11年+納付済23年で38年、年金の受給資格に必要な25年を満たしており年金を受給できます。但し、65歳からの老齢基礎年金額に反映する期間は27年分しかありません。そこで、有効なのが今回の情報という訳です。
受給資格が不足するB夫さん(64歳)の場合
B夫さんは60歳から65歳になるまでの任意加入5年を含めても納付済期間が15年しかなく、70歳になるまで5年任意加入しても20年の加入期間しかありません。このままでは年金の受給資格に必要な25年を満たせず将来「無年金者」でした。
加入期間が不足するC子さん(59歳)の場合
C子さんの納付済期間は18年、60歳から国民年金に7年任意加入して保険料を納付して公的年金の受給資格期間の25年を満たせば、老齢基礎年金は67歳から受給できました。
※表の年齢は便宜上平成22年3月末現在、年金額は平成21年度価格。カラ期間などは「第18回:まさかの無年金」を参照
追納の場合の保険料の加算
但し、未納期間の保険料を追納する場合、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額(現在、延滞金年14.6%)の上乗せが予想されます。きちんと毎月納付した人と公平さを保つためです。現在は免除期間などを追納した場合の加算額と未納期間の延滞金の内容は異なりますが、未納期間の追納10年の加算額の詳細は今後検討される予定です。10年以内追納できるのは嬉しいのですが、現実問題として高齢期もある程度余裕資金を持っていることが必要といえそうですね。
巷に情報は溢れていますが、本当に利用して欲しい人に届いていないのが残念です。多くの人が公的年金でしっかり老後の生活のベースを備える意識を持っていただけると嬉しいです。公的年金で備える金額が少しでも増えれば、民間の生命保険や個人年金の保障で補う分を増やせ、保険の効果がより発揮できるからです。まずは、平成23年10月1日までに施行される過去分追納10年拡大の情報チェックをお願いします。
執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/