相変わらず厳しい雇用状態が続く中(下図)、解雇や倒産などで職を失った失業者の医療保険など(国民健康保険・以下国保)の保険料負担の軽減対策が平成22年4月から始まっています。但し、いつものことですが、制度自体を知らない、正しく理解していない人もかなりいます。今回は、制度利用で負担がどのくらい軽くなるのか較べてみます。
(平成22年5月分 厚生労働省)
<参考> 有効求人倍率=求人数÷求職者数 (倍率が1を下回っていれば、求人不足を意味している)
国保保険料(税)軽減を受ける人と軽減対象期間
平成22年4月から国保保険料が軽減される人とは、倒産・解雇などによる離職(①特定受給資格者)や雇い止めなどによる離職(②特定理由離職者)をいいます。離職日の翌日から翌年度末までの期間において、①②として基本手当などを受ける人です。
厚生労働省
国保保険料(税)の軽減利用で、約13万円お得!
国保保険料(税)は、前年の所得などにより計算します。保険料(税)の軽減は、失業者の前年の給与所得の30/100を基に計算します。事例で較べてみましょう。
< 都内F市に住む、A(39歳)さんの場合 >
前年の年収500万円 所得346万円 妻 B子さん(37歳 専業主婦) 長女 (13歳)
Aさんが解雇などで離職した場合の選択肢は、①以前の会社の健康保険に続けて加入する任意継続被保険者になる②国保に加入して本来の保険料を納付する③軽減された保険料で国保に加入の3つです。
Aさんの場合、以前勤務していた会社の健康保険(協会けんぽ)に継続して加入した場合の保険料は約31万円です(第30回参照)。離職後国保に加入した場合の本来の保険料は約24万円、前年所得の給与所得の3割で計算した保険料は12万円弱、差し引き約12万円お得です。
家族を守るのはあなた ~ 制度を上手に利用しよう!
ハローワークや年金事務所などには、たくさんのお宝パンフレットがおいてありますが、手にとって見る人が意外と少ないのが残念。待ち時間を有効に使って、自分から情報を得る姿勢は大切でしょう。なお、国保と年金はセットで加入が原則です。年金も退職・離職した場合、「免除特例制度」があります。条件が合えば特例免除期間は、保険料負担なくして本来受給できる老齢基礎年金額の2分の1受給できる制度です。苦しいときほど病気やけがなどに備える保険は継続し、公的制度の利用で支出を抑える工夫が必要でしょう。
なお、厚生労働省は、平成23年度より年金と雇用保険の調整、国保の減免等の手続きに関する相談をハローワークで一括して行えるよう検討中です。
執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/